レーザープリンタの主走査と制御
レーザープリンタの画像形成に関する特許を題材に、レーザープリンタの構造と仕組みについて勉強しています。
レーザープリンタの画像形成の基本プロセスは以下の通りです。
① 感光体ドラムに、レーザー光によって静電潜像(静電気による目には見えない画像)を描く
↓
② 感光体にトナーを付着させる
↓
③ 用紙へ転写する
↓
④ 定着器を用いて熱+圧力で紙にトナーを定着させる
↓
⑤ 排紙
両面印刷の場合は、この後用紙を反転させて、裏面を同様に画像形成していきます。
このうち①のレーザー光によって潜像を描く工程が「主走査」と呼ばれている部分です。
主走査とは
主走査に関与するパーツ名は以下の通りです。
- レーザーダイオード(LD)
- ポリゴンモータ
- ポリゴンミラー
- Fθレンズ
- 光センサ
- 感光体ドラム
LDの役割は、もちろんレーザー光を発光すること。画像の情報(画素)をもとに、高速で光をON/OFFしながらポリゴンミラーに向けて発光します。
感光体の性質上、光が当たると静電気が消え、暗部では静電気が残るので、
画像のあるところ → レーザーON(静電気を消す)
画像のないところ → レーザーOFF(静電気を残す)
にして、感光体ドラムの上に潜像を描いていきます。
感光体ドラム
↑
│●○●○●○○● ← 1ライン(主走査)
│
□(LD)
トナーは静電気のないところに付着していきます。
ポリゴンミラーはポリゴンモータに接続されており、モータによって高速回転しています。

LDから発光された光はこのポリゴンミラーによって反射されます。
ポリゴンミラーは多角形の形をしていますが、例えば六角形だとすると、1回転で6面に光が当たり、感光体に照射されます。1面が1ライン分に相当するので、6面で6行描画できます。

ミラー1面が画像形成部分の端から端まで動くと、1ラインの主走査が終了したことになります。
レーザーによって1ライン描画されると感光体ドラムが回転し、次のラインに描画できます。この動作を副走査といいます。
光センサ(BD:Beam Detector/SOSセンサ)というのは、画像形成部分の外側に設置されたセンサで、プリンタの高画質を保持するための重要な信号を発信している部分です。(図のピンク)

ポリゴンモータは高速回転しているため、何らかの理由で(熱、振動など)わずかでも速度ムラが発生します。
速度が一定でないと、画像にもズレが生じ、画質が劣化します。
光センサは、1ラインごとの開始位置を揃えるための信号を送る装置です。
光センサが設置してあるのは、レーザー光が画像形成を始める前である、一番最初に光が届く場所であるため、レーザー光を検知すると、「ここから画像が始まるよ」と画像の各ラインの開始位置を確定し、信号にして速度制御装置へ送っているのです。
特許の内容
ここまでの流れは理解できました。
今回の特許では、このSOS信号から端を発する速度制御系のみで速度制御・画質保持をしていると、前提としてレーザー光を発光し続けることになり、レーザー発光装置(LD)の劣化・短寿命化が課題として取り上げられていました。
そしてこの課題解決のため、少しでもレーザーOFFの時間を捻出しつつ、かつ画質保持する方法をあげています。
それは、両面印刷の場合、用紙を反転作業している間は感光体に画像形成をしていないのだから、その時間はレーザーをOFFにしてしまおうというわけです。
ですが、レーザーをOFFにしてしまうと、光センサがレーザー光を検知することから始まる速度制御、開始位置ラインを揃える工程が作動しなくなってしまい、画質劣化につながってしまうので、別系統で速度制御と画質保持をしなければなりません。
その別系統の制御工程には、「ミラー回転信号」と「モータ回転信号」を使用します。
「ミラー回転信号」というのは「ミラー回転信号生成部」が生成します。
これは先ほどの光センサから送られてきたSOS信号をもとに、ポリゴンミラーの回転数を実測値で表していることになります。(SOS信号は 「1ライン走査の開始位置」 を伝えるだけで、回転速度までは教えてはくれません)

「ミラー回転信号生成部」は、ミラーの面数だけSOSを数えたら、ミラー1回転とみなして信号を生成しています。
つまり6面ミラーなら、
SOS 6回 → ミラー回転信号 1回
という変換をしています。
これによって実際の(実世界における)ミラーの1回転周期が時刻として取れるようになります。
この後、「ミラー回転信号生成部」で生成された信号は「切替部」を通って、「速度制御部」に送られます。
この速度検出部28が、一定時間あたりの周期から現在の回転速度ν_meas を算出します。
→ この ν_meas が画像品質に直結する「実測速度」になります。
この後、「モータ回転速度」についてもまとめたかったのですが、子供が起きてきたので今日はここまでにします。
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